テラドローン・Terra1シリーズ〜圧倒的なコストパフォーマンスで農薬散布用UAV市場に参入

テラドローン・Terra1シリーズ〜圧倒的なコストパフォーマンスで農薬散布用UAV市場に参入

テラドローン株式会社は、約一年前から協力会社と共同で開発を続けてきた農薬散布用UAVのTerra1シリーズを発表し、農薬散布事業に参入する。日本の農業は、高齢化や労働力不足などの課題を抱え、農薬散布をヘリコプター型のUAVで行う農家が増加している。(DRONE TIMES 田中亘)


小型で軽量かつ低コストな農薬散布ヘリで市場に参入

 農薬散布用UAVのTerra1シリーズの特長について、同社の事業開発部の桒原康史マネージャーは、次のように説明する。
「強味は、圧倒的なコストパフォーマンスです。ヤマハの機体と比較して、1/3の価格を実現しています。その理由は、散布タンクの容量を約1.5ヘクタール分にしたことで、エンジンや機体を小型で軽量に設計できたからです」
 Terra1シリーズは、62ccのガソリンエンジンで駆動し、機体は14.9kgと軽い。対するヤマハの最新モデルは、70kgの重量を390ccのエンジンで飛行させる。ただし、コンパクトな分だけ、散布できるタンクの容量は、ヤマハの24リットルに対して、14リットルと少ない。それでも、約1.5ヘクタールへの散布が可能だ。
 「機体が70kgもあると、大人が二人がかりで持ち運ばなければなりません。それに対して、Terra1は約15kgなので、一人で容易に搬入できます」と桒原氏は小型軽量のメリットを強調する。

自動化よりも現状の制度にそった事業モデルを優先

農薬散布用UAVのTerra1シリーズ
(C)テラドローン

 一方で、農薬散布や精密農業の分野では、マルチコプターによる実証実験を推進している事業者も多い。マルチコプター型であれば、GPSと制御システムを連携させて、将来的には完全な自動航行が可能になる。人件費も含めた価格競争力を考えると、将来的には自動化が強いと思われる。その傾向に対して、桒原氏は日本の農薬散布の現状を分析する。
 「現在の日本で、農薬散布用UAVを飛行させるためには、 一般社団法人農林水産航空協会から認定を受けたオペレーターと、そのオペレーターを補助して的確な誘導を行うナビゲーターの2名による操縦が必要です。また、散布に利用する機体も、飛行時間とペイロード(可搬重量)を考えると、マルチコプターよりもエンジンで駆動するヘリコプターの方が適しているのです」
  一般社団法人農林水産航空協会では、農薬散布に利用するUAVに対して、有人による無線操作を規定している。また、実際の運用においても、操縦するオペレーターと補佐するナビゲーターの存在が不可欠となり、自動化されたUAVを利用するメリットは少ない。加えて、機体の認定や操縦者の資格にも、同協会による審査が必要になる。こうした現状を判断すると、既存の制度に価格競争力のある機体を投入する方が、事業化の利点は多い。その機体となるTerra1は、2リットルのガソリンで約30分の飛行を可能にしている。散布タンクが満タンになると、飛行時間は減少するが、それでも20分以上の飛行は可能となる。代表的なマルチコプターでは、約10kgの積載量で10分の飛行が可能となっているので、比較するとヘリコプター型が有利だ。

再優先の課題はオペレーターの養成とサービス網の整備

(C)テラドローン

 Terra1は、初年度の一年間で100台の販売を予定している。そのために必要となるのは、Terra1を操縦できるオペレーターと機体を整備するためのサービス網の構築になる。
「当社はメーカーとして、Terra1を販売していきます。そのためには、まずTerra1が産業用無人ヘリコプターとして一般社団法人農林水産航空協会 から認定され、日本国内でオペレーターを養成できる認定スクールなどを整備していく必要があります。加えて、販売した機体の保守や修理などを行うサービス網を全国に展開していかなければなりません」と桒原氏は今後に向けた取り組みについて話す。
 Terra1の機体自体は、散布用タンクの代わりに大型カメラなどを取り付けて、空撮などでも利用できる。しかし、当面は農薬散布用UAVとして、ビジネスの基盤を整備していく計画だ。また、自動航行に関しても、現在の制度では不要と判断しているものの、将来的には視野に入れている。
「オペレーターとナビゲーターによる目視での操縦が基本なので、現時点で自動航行の必要はありません。また、エンジンタイプのUAVは、マルチコプターに比べて姿勢制御などが複雑になるため、完全な自動操縦は困難です。しかし、すでに北米のUAV関連企業と協力して、自動航行システムについては、開発と検証を推進していく予定です」と桒原氏。
今後の事業を推進していく桒原氏は、テラドローンに移籍する前に、テラモーターズで電動バイクをアジアに展開してきた実績がある。
 「メガベンチャーを創ることが、当社のミッションです。そのためには、メーカーとして販売網を整備し、数字の実績を出さなければなりません。アジアでの経験を活かして、価格競争力のあるTerra1で日本の農薬散布用UAV市場に挑戦していきます」
Terra1による農薬散布事業は、アジアへの展開も準備中で、精密農業や測量に防災分野への応用なども推進する計画だという。
(DRONE TIMES 田中亘)

この記事のライター

関連する投稿


ドローンの未来を垣間見る~KDDIスマートドローンの「凄いメンバー」たち~

ドローンの未来を垣間見る~KDDIスマートドローンの「凄いメンバー」たち~

モバイル通信ネットワークと3次元地図を活用した完全自律飛行に成功したKDDIの「スマートドローン」は、これからどこに向かうのか。実験に参加したメンバーを中心としたパネルディスカッションから、その未来を考察する。


ドローン大学校がテラドローン認定校として「Terra Mapper技能者認定証取得講座」開講

ドローン大学校がテラドローン認定校として「Terra Mapper技能者認定証取得講座」開講

ドローン大学校はテラドローン株式会社認定校として「Terra Mapper技能者認定証取得講座"ドローン大学校 3次元データ処理・解析プログラム"」を開校する。


プロドローンがKDDIと「スマートドローン」のモバイル通信ネットワークと3次元地図を活用した完全自律飛行に成功

プロドローンがKDDIと「スマートドローン」のモバイル通信ネットワークと3次元地図を活用した完全自律飛行に成功

株式会社プロドローンは、KDDI株式会社と、新潟県長岡市の協力のもと、4G LTEのモバイル通信ネットワークを活用し(注1)、「3次元地図」、「ドローンポート」を用いた「スマートドローン」の完全自律飛行実験を実施した。


【橋梁・トンネル技術展】首都高速の保守点検や災害時調査で活躍できるドローン技術は?

【橋梁・トンネル技術展】首都高速の保守点検や災害時調査で活躍できるドローン技術は?

PwCコンサルティング合同会社(東京)が主催するビジネスコンテスト「ドローン・ソリューション・マッチング」の決勝チーム4組が、首都高速道路株式会社、PwCコンサルティング、ドローンタイムズの審査員を前に、4分間のプレゼンテーションを披露した。


テラドローンがLGU+と韓国初 ドローン管制システムを事業化

テラドローンがLGU+と韓国初 ドローン管制システムを事業化

テラドローン株式会社(東京都渋谷区)は、 韓国の通信企業LG U+(韓国ソウル)と協業し、 韓国初のクラウド型ドローン管制システムを事業化した。


最新の投稿


御岳山と奥多摩の紅葉・幻の集落・ドローン4K空撮

御岳山と奥多摩の紅葉・幻の集落・ドローン4K空撮

こんな絶景が東京にあるなんて! 


セキドが2018年の新ビジョンを発表 ドローンの安全運用進めるSUSCの推進と虎ノ門エリアに新拠点を開設

セキドが2018年の新ビジョンを発表 ドローンの安全運用進めるSUSCの推進と虎ノ門エリアに新拠点を開設

株式会社セキド(東京都国立市)は第1回目となるパートナーカンファレンスを12月11日、都内のホテルで開催し、同社代表取締役の大下貴之氏が2018年に向けた同社の新たなビジョンを発表した。


大阪芸術大学写真学科がドローンの撮影技術を習得できる授業導入 2018年4月から

大阪芸術大学写真学科がドローンの撮影技術を習得できる授業導入 2018年4月から

大阪芸術大学がドローンの操縦技能と空撮技術が習得できる授業を導入、来春開講する。講師にはドローン撮影の第一人者で一般社団法人ドローン撮影クリエイターズ協会(DPCA)代表理事の坂口博紀氏が写真学科3年生を対象に特別授業を実施する。


香川高専がドローン水難救助システムを展示 SEMICON JAPAN

香川高専がドローン水難救助システムを展示 SEMICON JAPAN

 東京ビッグサイトで開催中(12月13~15日)の、国内外の半導体製造装置、材料が集まる展示会SEMICON JAPANの、高等専門学校の展示エリアで、「マルチコプターを活用した水難救助シシテム」を掲げ、人だかりができているブースがあった。香川高等専門学校(香川県)のブースだ。


半導体展示会SEMICON Japanに登場したドローン特別展示

半導体展示会SEMICON Japanに登場したドローン特別展示

東京ビッグサイトで2017年12月13日から15日までの3日間にわたって開催されたマイクロエレクトロニクス国際展示会のSEMICON Japan 2017に、ドローン・ジャパンが企画したドローン特別展示が開設された。