被災地に空から「からあげクン」とコミュニティーを! 樂天とローソンがドローン配送 南相馬で10月31日開始

被災地に空から「からあげクン」とコミュニティーを! 樂天とローソンがドローン配送 南相馬で10月31日開始

楽天株式会社と株式会社ローソンは10月6日、ドローンを使った商品配送を10月31日から福島県南相馬市で試験的に始めると発表した。2キログラム以内の商品を、同市小高地区にある「ローソン南相馬小高店」から、2・7キロ離れた「小谷集落センター」まで、樂天の配送専用機で運ぶ。「からあげクン」などの配送が想定されている。


ドローンを「フライドフーズ」の〝フライトツール〟に!

 発表会にはローソンの竹増貞信社長、樂天の三木谷浩史会長兼社長、南相馬市の桜井勝延市長が出席。ドローンの具体的な運用については樂天の向井秀明・樂天ドローン事業部ジェネラルマネージャーが捕捉した。
 この取り組みは、樂天がゴルフ場などで実験を進めてきたドローン配送システム「樂天ドローン」と、ローソンが地方の中山間地域や都市部の高齢者施設で展開している移動販売とを組み合わせたもので、ドローン配送と、コンビニの移動販売を組み合わせた取り組みは国内で初めてだ。10月末から試験運用の形で半年間実施し、検証を行ったうえでその後の展開を検討する。
 ローソン南相馬小高店は、毎週2回のペースで特定の場所まで出向いて販売する移動販売を実施し、そのうち毎週木曜日には、「小谷(おや)集落センター」に出向く。移動販売車は小谷集落センターで1時間ほど滞在し、販売をするが、積んでいない商品などの注文を受けると、移動販売車からローソン南相馬小高店に注文を出す。
 注文を受けたローソン南相馬小高店は、該当する商品を樂天ドローンの専用機「天空」に乗せて、小谷集配センターに滞在している移動販売車に商品を届ける。
 ローソンの移動販売車は、冷蔵、冷凍の食品には対応するが、暖かい音頭管理が必要な惣菜には対応していない。このため、ローソンの代表的な商品のひとつである「からあげクン」のようなフライドフーズをドローンが届けることなどを想定している。

説明会のフォトセッションでの一コマ。左から楽天の三木谷浩史会長、南相馬市の桜井勝延市長、ローソンの竹増貞信社長。3人の前に置かれている楽天ドローン「天空」の箱に、ローソンの代表的な惣菜商品「からあげクン」がのぞく

2・7キロのドローン配送に必要なのは「離陸」コマンドだけ

 配送に用いるドローン「天空」は、樂天が出資している株式会社自律制御システム研究所(自立研、ACSL)と共同開発した機体。操縦者が離陸、前進などひとつひとつの操作を指示することなく、自動航行が可能なことが特徴だ。飛行ルートは、ローソン南相馬小高店から、小谷集落センターまでを、ほぼ河川の上を通貨するように予め設定してある。操縦者は「離陸」操作だけで、あとは天空が自動的に積荷を届けて、帰還する。
 今回用意する「天空」は2機。当面は、手動でドローンを飛行させる技術を備えたスタッフが、店側と移動販売を行う「小谷集落センター」側で待機する。また飛行に使う通信システムは920メガヘルツ帯、2・4ギガヘルツ帯だ。ドローンによる配送は、天候の影響を受けることがある。

今回の樂天とローソンの取り組みでは店舗と移動販売先の2・7キロで、ドローンが商品配送を手伝う計画だ

避難指示解除から3か月後にオープンしたコンビニが拠点

 取り組みの舞台となる南相馬市小高区は、東京電力福島第一原発事故の影響による避難指示区域の指定が、2016年7月に解除された。住民の帰還が進み、町としての活気を取り戻し始めているものの、日用品や食品など買い物環境の向上は優先すべき課題となっている。
 「ローソン南相馬小高店」は、震災から休店を続け、2016年10月に営業を再開した。住民にとって貴重な買い物の場、コミュニティー形成の場となっている。
 ローソンは買い物弱者の課題解決のため、2013年に移動販売を開始し、現在全国の28都道府県、80店で実施している。今回の取り組みは、移動販売と、樂天のドローン配送と組み合わせることが地区の課題解決にどれほど効果をあげるかを確認する取り組みでもある。
 一方樂天は、樂天はドローン配送ソリューションを提供するサービスを2016年5月に、「そら楽」の名前で提供を開始し、これまでにゴルフ場は地方自治体などで実験を重ねてきた。今年2月に南相馬市と物流システム構築を含む包括連携協定を結んでいる。現在、このサービスを「楽天ドローン」と改称し、サービスの充実に努めている。楽天は、空撮、測量など建設関連、農業、エンターテインメントなど多分野にわたるドローンの利活用の中で、実用化が最も難しいといわれる物流、配送サービスの実用化に、一貫して取り組んでいる企業でもある。
 ドローンを使った荷物配送については、政府が2015年11月5日に首相官邸で開いた官民対話の中で、安倍晋三首相が「早ければ3年以内に小型無人機を使った荷物配送を可能にする」と述べている。樂天とローソンの取り組みは、半年間の期間限定の試験運用ながら、商品配送に道を開いたことになる。

説明会でプレスからの質問に応じる(左から)樂天の三木谷浩史会長、南相馬市の桜井勝延市長、ローソンの竹増貞信社長

竹増貞信・ローソン社長の話

「シニア化が進み、課題解決とニーズの取り込みを図りたい」と意欲を示すローソンの竹増貞信社長

「この1か月半、全国をまわりオーナーの話を聞いた。多かったのが地域住民のシニア化と、核家族化だ。1人シニアのニーズを取り込むことがこれからの店づくりの上で大切だ、という深刻な話を聞いてきた。今回の移動販売車とドローンを組み合わせる取り組みは、そうしたニーズを取り込むことにつながると思っている。移動販売とは、物販需要を満たすことにとどまらない。コミュニティーづくりにつながる。移動販売者が来るたびに顔をあわせる住民もいる。こうしたコミュニティーづくりを大切に思っているオーナーの志に支えられてこそできる取り組みでもある。移動販売は今後、100台ぐらいにまで増やし、コミュニティー活性化につなげたい。それがわれわれの企業理念にも一致する」

三木谷浩史・樂天会長の話

ドローン配送の協業の取り組みの意義について説明する樂天の三木谷浩史会長

「今回の取り組みはふたつの側面がある。ひとつは、震災以降、復興への協力関係にある南相馬市との新たな取り組みであること。もうひとつは、ますます発展を続ける自動運転、モビリティ革命を進める取り組みであること。われわれは技術の真価に対応すべくさまざまな形で取り組んでいて、Lyft(リフト社、米国)、Careem(カリーム社、ドバイ)などライドシェア会社に投資し、倉庫内の自動化に取り組んだりしている。それも交通、物流の革命が進むと考えているためだ。そのひとつにドローンがある。重量制限、規制が多いが、一方、過疎地域、山間部、離島では人手での運送ではコストが見合わないなどの問題もあり、空以外の、海、陸の自動運転も含めて解決していく必要がある。今回の取り組みはその一歩となる」

向井秀明・樂天ドローン事業部ジェネラルマネージャーの話

「この取り組みが人々が南相馬市に戻ってくるきっかけになれば」と話す樂天ドローン事業部の向井秀明ジェネラルマネージャー

「樂天は2016年にゴルフ場で配送を開始し、法改正にも携わってきた。樂天のドローン事業の3本柱は、第1が、新たな利便性の提供で、ゴルフ場やキャンプ施設でドローンよる配送で新たはeコマース体験を提供してきた。第2が買い物困難者の支援で、今回の取り組みは之に当たる。近所に商店がない場所ではドローンで届けることで革新的なインフラになる。第三が緊急時インフラの構築だで、ふだんからドローン配送を利用していれば、有事のさいに分断された地域をつなぐインフラになる。今回、買い物困難者支援というミッションを持つローソンと、移動販売車とドローンとをコラボさせて今までにない利便性を提供することができることになった。利用者は、ホットフーズのような、移動販売車に在庫として持てないものも、ドローンと組み合わせることで購入できる。こうしたサービスの実現で、南相馬市に人々が戻ってくるきっかけが作れたら幸いだと考えている。今後ドローンの改良を重ねる。交通の便の悪いところでも、より多くの人々が住む社会が作れるのではないかと考えている。また南相馬市には、『ロボットフェストフィールド』がある。ドローンやロボットについて、日本の中心になることが想定されている。この地で、ほかに先駆けて配送を社会実装できることをうれしく思っている」

桜井勝延・南相馬市長の話

「コミュニティーの再生につながる」と今回の取り組みを歓迎する南相馬市の桜井勝延市長

 「震災で南相馬市には高さ21メートルの津波が押し寄せ636人が犠牲になった。原発事故が起きて20キロメートル県内は避難指示が出され、1万4000人が強制的に避難を余儀なくされた。昨年7月12日に避難指示が解除された。ゼロになった1万4000人の地区が、解除時点で800人。いま2500人以上になった。厳しいのは、震災がなければ30%に届かなかった高齢化率が、51%になったこと。買い物弱者、交通弱者、医療弱者が問題になっている。南相馬市としてなにをしなくてはいけないか。市民の生活の支えを作ることだ。ローソンが昨年10月に小高区にコンビニをオープンさせてくれた。市としても買い物の場所を作ってはきたが、朝から晩までとはいかず、このオープンには改めて御礼申し上げたい。樂天は今年1月、市内で世界で初めて12・7キロの配送実験を成功させた。これで何がわかったか。ドローンで、足りないものが届くということだ」
 「10月1日には、移動販売の実験に参加した。ここでふたつのことを感じた。ひとつが、便利だな、ということ、もうひとつが、お年寄りが多くなっている現場で、話し合いの機会を与えて頂いたこと。コミュニティ再生に確実に結びつくと思う」
 「1人暮らしのお年寄りが増えている。彼らが一番困っているのが、話し相手、買い物、交通。今回の取り組みは、コミュイティーの再生につながり、利便性の向上につながる。このサービスが実現すれば、他の地域に波及することだろう。南相馬は震災で物が入らなくなるという経験もした。ドローンがあえば、命を救う。今回の取り組みで思うのは、樂天、ローソンともスピード感があること。これが被災地にもっとも求められている」
 「小高地区には4月、小高産業技術高校が開校した。校歌が柳美里作詞、長渕剛作曲で話題になった。ここが人材を提供していく。南相馬は挑戦の町。これからも挑戦していく」

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