【2018展望】慶大・南政樹氏(下)〝つくる人を増やそう〟年間に!

【2018展望】慶大・南政樹氏(下)〝つくる人を増やそう〟年間に!

 「ドローン前提社会」を掲げる慶應義塾大学SFC研究所・ドローン社会共創コンソーシアムで事務局長を務める南政樹氏(慶大大学院特任助教)のインタビューを前回に続いてお届けする。南氏は2018年について「つくる人を増やそう年間」と答えた。そのココロは?


本当のニーズを満たすため、利用から創造のフェーズに

 ――南先生はこれまでも様々な仕掛けをしてきました。2018年はどんな年と展望していますか?
 南氏 「作る人を増やそう年間」にしようと思っています。
 ――「使う人」ではなく?
 南氏 ドローンを使う人は増えていますので次の段階に引き上げたい。パソコンもそうじゃないですか。最初は使いこなす人が出てきて、だんだん互換関係が出来て、パーツを秋葉原で集めて、組み合わせて作ってみる。そうすると部品同士の相性のよし悪しみたいなものが分かってくる。パソコンはどんな系譜をたどったわけですが、ドローンもそうなるほうがいい。初期には完成した魅力的な製品が支持されて広がるわけですが、そのうちに、「こういう使い方したいんだけどな」という欲求が出てくると思うのです。そのときに、自分の欲求に見合うドローンを自分で作るような人を増やしたい。
 ――ドローンの自作、ということですか
 南氏 自作です。ドローン自身が自律制御に基づいて様々な作業をしたり、ミッションをこなしたりする。パソコンでいえば、人手でやるには面倒くさい処理を勝手にやってくれるようにプログラムを組むといったことです。
 ――そのココロは?
 南氏 ニーズって人それぞれだと思います。市販の製品そのままでは、ニーズのどこかでがまんすることがあると思うんです。自分でカスタマイズして、制御を少しかえて、ということをすることで、本当の自分のニーズを満たすために使えるドローンを自分で作る。そんな人を増やしたい。ドローンプログラミングももちろん入ります。福島での活動にもドローンプログラミングを取り入れたいと考えています。飛ばす人だけではなく、作る人を増やす。利用から創造のフェーズへ引き上げることを考えています。
 <慶大は福島県田村市と2016年12月に〝ドローン連携協定〟を締結し、田村市を中心に地域活性化、人材育成など多角的な活動を展開している>

異なるバックグラウンドなりの参入方法

 ――そこで重視することは
 南氏 制御工学の専門家や、航空工学の専門家は、もともと自分たちが持っている技術がありますから、それを足がかりにできます。でもそうでない人、私もそうですが、たとえばIT関係者がドローンを作りたいと思ったら、どういうところに気をつければいいのか、という、ITをバックグラウンドとした人なりの入り方っていうのがあると思うんです。初心者のように、すべてが初めてなのであれば、すべてを学べばいいとは思いますが、ただ それでも、その時点では知らなくてもいい理屈、というものがあると思っています。
 ――知らなくてもいい理屈、ですか
 南氏 たとえば航空工学では「翼面荷重」(航空機などの翼にかかる重量を1平方メートルあたりで表す値)の計算方法などを学びます。これを制御するにはどうしたらいいか。制御の方法にも「PID制御」とか「カルマンフィルター」とか、さまざまな方法がありますが、大事なのはそれを使えるようにすることだと思うのです。それを使うと、使わないときと比べて何がどう変わるのか、というエッセンスの部分を知ることができれば使えます。本来、PID制御では、たとえば大学の授業では、なぜ積分するのか、微分するのかといったことを学びますが、ドローンを作るさいに活用するのが目的であれば、その理屈までは知らなくてもいい。現在の状況から、目的とする状況にスムーズに至らせることができさえすればいいわけです。それが分かる仕掛け、「ドローン工学」、と言えばおこがましいのかもしれませんが、そんなことを抽象化した概念を獲得することで、抽象的にプログラムすることができるようになります。そこを目指したい。人材育成もそっちにシフトできればといいなと、思っています。
 ――操縦とは別ですね
 南氏 操縦士も大事ですが、操縦士のスクールはすでにたくさんあります。それに比べて、ドローンプログラムというと極端に少ない。あるとしてもソフトウェアのアーキテクチャーとしては、古いタイプのオペレーティングシステムにしばられたプログラムだったりします。でも、ドローンでいろいろなことを実現したいと考える人には、モダンなコピューターオペレーティングシステムのほうがいい。それを考えたときに、たとえばDJIの「オンボードSDK」や「ガイダンスSDK」を使いこなせる人がいれば、「なにかしたい」のニーズを持ったときに、そのニーズに答えられるわけです。カスタマイズができるか、別なやりかたを持っているか。とりあえず最初の段階としては、いまある、ありものの中でドローンを作る人。ありもので自分のやりたいことが出来る人。こういう人を増やしたい。「つくる人を増やそう年間」は、そこが狙いです。

サイバースペースのポテンシャルをリアルスペースに

 ―――自分で作りたいというニーズは高まりそうです
 南氏 たとえばParotのMAMBOというトイドローンも、自分で制御でき、かつ、それができると、裏側で人工知能にもつなげることができます。たとえば深層学習フレームワークのChainer(チェイナー)のシステムにもつなげます。それこそMAMBOのカメラがとらえた映像で画像認識をして、星形を見つけたらそこにランディングするとかも可能です。少し前からいろんなところで話しているのですが、サイバースペースのポテンシャルを、リアルスペースに持ち寄るには、サイバースペース側でできることはサイバースペース側にまかせ、リアルスペース側でやるべきことをドローンの自律的な判断にまかせるという協調関係で、システムを作る必要があります。そういうアーキテクチャーを教えることが、2018年の目標です。プログラマーのバックグラウンドを持ちながら、ドローンの領域に入るには何を知っていればいいかをまとめておくだけでも敷居が下がります。
 ――多くの人が使えるようにするためには通るべき過程ですね
 南氏 インターネットがまさに、そういうモデルです。たとえばイーサネット。無線LANを切り替えても、表からみたときの操作はまったく一緒です。その中を知る必要は、使うためには先決ではないわけです。でも通信事業者であれば、それは別の話。その中を細かく見て、どうしたらより多くの人が同時に使えるか、どうしたら素早くデータを届けられるかを常に考えています。この業界の方々ががんばってくれないと、インターネットは発展しないのは確かですが、その方々ががんばってくれて抽象化してくれているおかげで、ほかの方々はそこを考えなくてよくなっている。インターネット業界の方々は、通信事業者の苦労をそっちのけで、「画像見てぇ」だのわがままを言える(笑い)。抽象化すべきところを抽象化して、ブラックボックスにすべきところはブラックボックスにする。そのようなやり方で、ITバックグランドの人たちが、ピボットしてもスムーズに入れるようになるのではないかなって、思っています。
 ―――そこを教わる機会は、現状では少ないようにみえます
 南氏 制御工学とかは、学びたくなったときに学べばいいと思います。やりたいことをするために、先に学ぶべきことは使い方と、そして使ったときに何ができるかということ。それをつかって、自分なりに作ることが、社会の問題解決には近いと思うんです。技術至上主義になっちゃうと、技術そのものを追求したくなります。ドローンでいえば、速さとか、効率のよさとか。でもそれだけだと、ドローンは発展しないと思います。ドローンでやりたいことをやるのなら、そういったことは、その分野の専門家や好きな人に任せることが大事で、産業とか社会を考える人たちは、それを使ってどう実装するかを考え、実際に作ることのほうが大事だと思います。少なくとも今は、その土壌がないような気がしています。ニーズが細分化してくると、ありものの組み合わせだけでは、間に合わせてみたところで、本当にしたいことにはどこか足りなかったり、がまんしていたりすることが起こる。そこに手が届くためには、作るということは、そんなに難しくないんだよ、とか、こうするとできるようになるんだよとか、こういうやりかたがあるから勉強してごらん、とか、そういったナビゲーションが必要だと思います。「つくるヒトを増やす年間」ですけれども、自分ではナビゲーションをがんばることを活動目標にしています。この分野は、若い方が活躍し牽引できる領域でもあると思っています。(以上)

ドローンタイムズのインタビューに応じる南政樹氏

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