旭川でスマート農業シンポジウムを開催(1)

旭川でスマート農業シンポジウムを開催(1)

一般社団法人セキュアドローン協議会は、2018年2月16日に北海道旭川市のJA会館で、スマート農業シンポジウムを開催した。代表理事の春原久徳会長の特別講演や、農業生産者に研究機関の研究員などがパネルディスカッションに参加し、日本の農業とドローンに関する熱い議論が交わされた。


農業の産業化に向けてドローンが果たす役割とは

 スマート農業シンポジウムには、80名を越える参加者が旭川市内だけではなく、道内や本州からも集まった。前半の特別講演には、セキュアドローン協議会の春原久徳会長が「農業分野におけるドローン活用の現状と今後の展望」と題した講演を行った。日本の農業が抱える課題について、春原氏は「就農人口の減少や高齢化に、国内での消費の減少による輸出の増加」という現状を分析した上で、解決していくためには「農業を産業化して情報システムの活用や見える化による農作物情報の正しい伝達」が重要だと指摘する。農業の産業化に向けては、川上となる生産者からレストランやスーパーのような川下まで、農作物の情報が伝わるためのシステム構築が理想になる。そして、スマート農業におけるドローンの役割について、春原氏は二つあると説明する。一つは、薬剤や肥料などを「運ぶ」ドローン。もうひとつが、情報を「集める」ドローン。春原氏の分析によれば、産業用途でドローンが活用されている分野の80%が、情報を収集するリモートセンシングに使われているという。農業の分野ではドローンが登場する以前から、ヘリやセスナに人工衛星などで空から農地を撮影する取り組みが行われてきたが、可視光による上空からの撮影だけでは十分な情報が得られなかった。それに対してドローンによるリモートセンシングでは、マルチスペクトルカメラやサーモカメラを取り付けて、低い高度から撮影することにより植生や土壌に水分量などの情報を得られる。その結果、NDVI(正規化差植生指数)をはじめとして、植物の生育状況を分析できる様々な指数を計算できるようになる。そして、その各種の指数から光合成の状況や水と肥料のバランス、植物のストレスなどを解析できるようになる。

講演する一般社団法人セキュアドローン協議会の春原久徳会長

リモートセンシングは投資対効果のバランスが重要

 ドローンによるリモートセンシングを活用したスマート農業は、日本でも2〜3年ほど前から行われてきたが、春原氏は「ROI、リターンオブインベストメント。つまり、どれだけ資金を投入したら、いくらのリターン、戻りがあるのかを重要視してもらいたい」と来場者に提唱する。資金を投入すれば、現在でも詳細な農地や田圃の植生や土壌のリモートセンシングは可能になる。しかし、明確な目的や投資効果を前提としないドローンによる精密農業の実施は、継続的な計測と分析ができなくなり、単なる実証実験で終わってしまう危険性がある。また対象となる農地や植物の種類に合わせて、ドローンによる空撮だけではなく、ローバーなど地上を走行するロボットなどの活用も検討するべきだと春原氏は提言する。そして収集したデータを解析して得られる結果にも、生産者だけではなく流通から販売に至るまで、それぞれの事業者による活用目的の違いがあるという。春原氏は「農家では発芽や生育むら、収穫時期の判断に病害虫の発見が、リモートセンシングを利用する投資対象になります」と指摘し「農協や自治体農政や損害保険会社では、農作地の管理情報に営農指導と収穫順や災害調査などの目的が重要になります。さらに食品加工やレストランにスーパーとなると、収穫予想といった情報を必要としてきます」と分析する。

マルチコプターと固定翼を使い分けるリモートセンシングが効果的

 2016年に400hの農地を、2017年には10倍の4,000hをリモートセンシングしてきた春原氏が会長を務めるドローン・ジャパンでは、2018年に40,000hを計測するプランを立てている。その理由について春原氏は「情報を集めることで、様々な比較が可能になり、データが詰まれば詰まるほど、分からなかった問題をAIが分析してくれるようになる」と話す。データの重要性を理解してもらうために、2017年に収集した画像を元に発芽状況からの収穫予想や、自然農法と慣行農法の違いを植生分析から判別する様子を紹介した。さらに具体的なリモートセンシングの事例として、マルチコプターでは最大でも6hの撮影が限界であるのに対して、30〜40分の飛行が可能な固定翼ドローンであれば一度の飛行で60h以上を撮影できる性能の違いなども説明された。
 最後に春原氏は「スマート農業の実現には、計画から実行までを繰り返すPDCAサイクルの確立が重要です」と訴える。農業におけるPDCAでは、最初に課題を抽出し、解決のための優先度を決め、そこから数値目標となる計画(Plan)を立てる。そしてドローンによるリモートセンシングなどの施策を実施(Do)して、データの内容や解析結果などを確認(Check)する。その後で、次回に向けた修正や改善(Action)を行い、次年度からの計画へと引き継いでいく。「課題は各地域や農家によって異なります。すべてを解決するのは無理でも、優先順位を決めて課題に取り組んでいくことが重要です」と春原氏は締めくくった。

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