2018年は固定翼ドローンの普及年になるか

2018年は固定翼ドローンの普及年になるか

DJIが固定翼ドローンを開発しているのではないか、という噂がネットを駆け巡っている。その真偽はともかくとして、産業用ドローン元年と称された2017年が終わり、2018年はVTOL(垂直離着陸)能力を備えた固定翼ドローンの普及年になるのではないだろうか。


際立つ固定翼型が登場した2017年

 2017年のドローン10大ニュースには入らなかったものの、個人的にベスト3に選んだ候補の1つが、swift 020に代表される固定翼型UASの登場だった。その機体は、日本の人気アニメに登場した一枚翼に似た形状で、垂直の離着陸と空中での水平飛行を実現している。日本で行われたデモフライトを間近に見た印象は、その飛行の優雅さだった。離陸後に空中で姿勢を変えて水平飛行に移ると、主プロペラだけの推進に変わり、その瞬間にプロペラ音が消えて、大きな鳥が空を舞うように飛ぶ。長い距離を安定して飛行するためには、やはり翼の力は偉大だと実感させられた。
 しかし、固定翼型のUASにも課題がある。第一の課題は離着陸の方法だ。swift 020のようにマルチコプターと固定翼の利点を組み合わせた機体は稀で、商用化を実現している固定翼UASの多くは手で投げるように飛ばして、帰還時は胴体着陸になる。senseFly社のeBeeやMAVinci社のSIRIUSなどが、手投げ型固定翼UASになる。これらのUASに共通しているのは、機体の軽さ。発泡ウレタン製の機体をカーボンなどで部分的に強化して、強度と軽量化を両立させている機体が多い。その軽さを活かして胴体着陸するのだが、結果的にある程度の着陸スペースを考慮した運用が求められることになる。
 第二の課題はペイロード。MAVinci社のSIRIUSの離陸重量は2.7kg。測量用のカメラを搭載するのがギリギリで、輸送などの用途には使えない。swift 020でも、現在の試作機は2.0kgまでの物資しか搭載できない。
 そして第三の課題が、飛行距離の長さ。これは、本来であれば固定翼UASの最大のメリットになるのだが、数10〜100kmを越える飛行を可能にするためには、技術的な課題よりも法整備の壁に突き当たる。この壁を突き破るために、Zipline社のようにアフリカで事業を立ち上げた例もある。米国でも、UASの長距離飛行を支援するために、ニューヨーク州が50マイル(約80km)のUAS用空路を整備するなど、海外ではベンチャー事業をサポートする動きが活発になっている。
 これらの課題は、固定翼UASの実用化を左右する大きな要因であると同時に、その解決に向けた取り組みや技術が、マルチコプターに代わる新たな産業用UASの可能性を広げる期待でもある。

エレガントな離着陸と水平飛行を披露するswift 020

まだまだ新しい機体が登場するVTOL市場

Songbirdのプロペラの構造はVTOL型ドローンの新しい可能性を広げる

 日本でもVTOL能力を備えた固定翼の開発を推進しているベンチャー企業はある。VTOLを実現するためには、マルチコプターと固定翼の「いいとこ取り」をしなければならない。だが、ひとつ間違うと「虻蜂取らず」の設計になりかねない。これまでの取材で目にしてきたVTOL型ドローンは、オスプレイのようにプロペラを可動させる性能を備えて、離着陸と推進力を得ようとする設計が多かった。そんな中、ドイツのGermandronesというベンチャー企業が開発したSongbirdという固定翼は、ユニークな発想で「いいとこ取り」を実現した。加えてSongbirdは、ネットに流出しているDJIの固定翼ドローンよりも洗練されたデザインになっている。そのエレガントな設計は、翼の両側に取らつけられた4つのプロペラを稼働させる構造にある。それだけならば、オスプレイ型と違いはないが、独創的な部分はプロペラの向きにある。前方のプロペラは、水平の位置から上向きに90度の角度で可動する。反対に後方のプロペラは、水平の位置から下向きに90度の角度に動く。その結果、離着陸時は4つのプロペラによるマルチコプターとして飛行する。そして空中でそれぞれのプロペラを水平位置に動かすことで、固定翼のための推力を得る。投稿されている動画からは、水平飛行中にも4つのプロペラが動いているが、おそらくモーターの回転数を制御してバッテリーの消費は抑えていると考えられる。
 公開されている飛行性能によれば、翼のサイズは3.1メートルで、機体はグラスファイバーとカーボン素材で構成されている。最大ペイロードは2kgで最大離陸重量は10kgになる。最高速度は160km/hで、風速19m/sでも飛行が可能。標準の飛行時間は60分未満だが、大容量のバッテリーを搭載して最大2時間の飛行にも対応する。機体は耐水性が高く、寒冷地や雨、砂漠や熱帯ジャングルでのテスト飛行の実績もある。フライトコントローラーは、ハードウェアもソフトウェアも独自開発で、無線制御は2.4GHz、テレメトリ周波数は433MHzか868HMzに対応する。セットアップは10分未満で完了するという。
 Germandronesのサイトに掲載されている情報を見る限りは、まだ実証実験の段階でSongbirdの販売価格や時期などは未定。しかし、公開されている動画を見ると安定した離着陸と水平飛行を行っている。ちなみに、swift 020も実質的なペイロードが2kgなので、現時点でのVTOL型固定翼の積載限界なのかもしれない。このペイロードと飛行距離をどのように活用すれば、産業用ドローンとしてのビジネスモデルを構築できるのかが、VTOL型ドローンの普及を大きく左右する。

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