ドローンのプログラミングで国語力を鍛える? 奈良の中学生向け公開授業を見学してきた!

ドローンのプログラミングで国語力を鍛える? 奈良の中学生向け公開授業を見学してきた!

 ドローンを自動で飛行させるためのプログラミングを国語として教える授業を、奈良女子大学附属中等教育学校が公開した。ドローンの活用法は拡大しつつあるが、「国語」での利用とは珍しい。想像を膨らませて見学に出かけたら、予想しない光景が繰り広げられていた。


CM風メッセージ動画上映 「ドローンで躍動感表現したかった」

 授業は、中高一貫の6年カリキュラムの2年生、一般の中学2年にあたる、約40人のクラス向けに行われた。授業の冒頭、生徒に予め課されていた「CM」の上映会が始まった。生徒各自が伝えたいメッセージを30秒のCM風にまとめた動画だ。
 上映された作品は多様性に富んだ。学校の下足入れが正面から画面いっぱいにうつしだされた作品は、整理整頓の奨励がメッセージ。ラケットにガットを貼ろう、とメッセージが出たと思ったらすかさずスポーツ用品店の連絡先が出る動画もある。ほかにも、バドミントンの楽しさ、茶道の魅力、おにぎりの再評価、スニーカーのかわいらしさ、音楽、フルートなど、約20分で約40本を見たが飽きない。ドローンから撮影したらしい映像を含む作品も多かった。
 上映が一周したあと、生徒3人が先生から指名され、作品の自己分析をするよう指示された。下足入れをテーマにした生徒は、「対象は生徒。意識したことは、興味を持ってもらうこと。CM動画は興味をもってもらえるメッセージを作りやすいと実感した。注目される手段として有効ではないか」と総括した。
 また、同じメッセージを模造紙に書いて廊下に張り出す場合を比較し、「模造紙に書いた場合、メッセージが重い印象になりがち。そうなると読まれない可能性がある。動画にも、たくさんの文字を入れると、読み取りにくくなると感じたので、メッセージによって使い分ける必要がある。また、口頭発表などとおもに、複数の手段を組み合わせるとより効果が高くなると思う」と分析した。
 別の生徒は、スニーカーの魅力を伝える動画を作った目的を説明した。作品ではさまざまなスニーカーが短時間で切り替わるように画面に登場する。「スニーカーをダサいと感じる人がいると思いますが、私はスニーカーが好き。冬のブーツ、夏のサンダルにまけない魅力があると思う。その魅力を伝えたくて、いろいろなスニーカーを登場させた。スニーカーで颯爽と歩く足もとをドローンで撮影したかったが、歩く速度にあわせることが難しかった」と振り返った。
 音楽の楽しさを伝えた生徒は「ドローンで躍動感、臨場感を伝えたかった」と作品に使った理由を説明した。
 これは、国語なのか。

奈良女子大学附属中東教育学校で行われた二田貴広先生が指導する公開授業の様子。二田先生が授業の次の展開を問う場面もあった

〝プログラミング的思考〟が表現の拡張を導くのではないか

 この授業を指導しているのは、同校の国語科の教員、二田貴広先生だ。公開授業は同校の学校設定科目「情報と表現」。正真正銘、国語の授業の一環だ。授業はパナソニック教育財団教育実践研究に採択されている。つまり、研究を目的としている。
 研究課題は「中学校国語科でのプログラミングを活用した新たな表現力の修得を可能にする単元の開発」。そのねらいは2点ある。
 1つめが「論理的思考力育成での中学校国語かの学習目標と接続したプログラミング学習の開発」。これは、次の学習指導要領で、高校国語科向けに「現代の国語(仮称)」、「論理国語(仮称)」が盛り込まれている予定であることから、中学校段階で育成、向上させる思考力を逆算し、プログラミング学習がその思考力を向上させるのに役立つかどうか実証すること。
(参考:中学校段階で育成、向上させる思考力について、ここでは「実社会、実生活における言語による諸活動に必要な能力、多様な資料等を収集して解釈する能力と、根拠に基づいて論述したり議論したりする能力」と定義している。また、プログラミング学習は「論理的、創造的に思考し、課題を発見、解決する能力」を向上させることが前提になっている)
 2つめが、「新たな表現力(創造力)育成での中学国語の学習目標と接続したプログラミング学習の開発。生徒達は模造紙に書いて張り出したり、パワーポイント、劇などを通じて発表したりする表現を経験しているが、プログラミングはその表現を拡張するのに役立つかどうかを実証するということだ。
 生徒達は、CMに盛り込むメッセージを効果的に演出するために、ドローンの映像を組み込んだ。効果的な映像を獲得するために、ドローンをどう飛ばしたらいいか、その飛行を実現させるためにどうプログラミングをしたらいいのか試行錯誤をした。
 たとえば、テニスコートの広さを、見ている人に実感してもらうために、コートの端から端までを連続して撮影し、上空からもとらえたいのであれば、ドローンを起動し、たとえば10秒浮上させ、たとえば20秒前進させ、そこで160度旋回させる、などの動きをプログラムする。
 そのときのアタマの使い方が、2つの狙いを満たすと仮説をたてた授業だった。
 使ったドローンはParrot「MAMBO」。基本的な操作方法や、プログラミングの技術を学んだばかりだ。そのため、基本動作をくみあわせることで、欲しい動画が取れるかどうかが腕の見せ所となった。
 スニーカーについて発表をした生徒が「(ドローンの動きを)歩く速度にあわせることが難しかった」と発言したことは、論理的な思考と、課題発見の足がかりとなったことを示していた。また、ドローンを使った映像が「興味をもってもらえる」、「注目される手段として有効」の発言は、表現の拡張を実感していると印象づける。
 こういった背景があることを知っているかどうか派別として、生徒たちは授業中、ずっと前のめりで、発言も相次いだ。授業にはITの専門家として、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社(東京)の小川浩司氏が招かれていて、生徒たちに「10年後」についての講演をし、質疑応答もした。生徒たちは終始、楽しそうで、前のめりだった。

「論理国語(仮称)」とドローンとプログラミングの愛称

 二田先生は授業をふりかえり、「生徒達が前向きだったことから、まずは成果があったと思う」と話した。
 二田先生の問題意識は、プログラミングを教えよ、と広く言われるその風潮にある。「というのも、プログラミングそのものを学ぶ目標にすることは、実社会や実生活で活かせるスキルになるかどうかに疑問の余地があると考えられるから。なんのために、という視点を補完する必要がある。実生活の課題を解決するためには、分割することや、それを伝える適切な表現方法を獲得することが必要だ。そう考えると、課題を解決するために、プログラミング的思考が有効だ。国語でプログラミング的思考を育成させることができるはずなので、それを授業で実践した」
 ドローンを使ったことについても、「生徒が『おもろい』と思ってもらえると思った、というのが一番だ。抽象的なプログラミングで、具体的なものが動くとことで、論理の可視化を体験できることも大きい。キャラクターを動かすプログラミングをさせたこともあるが、それよりもつかみどころがある」という。
 ところで、国語のテスト対策に、この授業は役立つのだろうか。「たとえば評論文が読める、ということは、論理をとらえられている、ということ。その思考訓練の基礎固めができる」という。少なくとも点数アップのベースとなる論理的思考の訓練として、従来にはなかったアプローチであることは確かだ。
 「論理国語」が学校の科目に組み込まれるとき、教え方のひとつとして教科書のヨコに、ドローンと、プログラミング用のタブレットが当たりまえのように置いてある時期が、遠くないのかもしれない。

ゲストとして登壇した日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ小川浩司さんの講演。「アイディア」を生み出すには「仕組みの理解」が必要で、「仕組みの理解」が進めば「アイディア」が浮かぶ、と説いた

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