産業用ドローン市場の将来を見据えたプログラミングコンテスト
コンピュータソフトウェア製品に関係する企業が集まったCSAJは、今後の産業用ドローン市場の成長に向けて、制御系アプリケーションの開発が重要だと捉えている。そして、自動航行や精密な制御に計測、そして情報システムとの連携を実現するためには、ドローンのソフトウェア・プログラム開発者の育成が、重要だと考えて今回のコンテストを開催した。コンテストは、約1年前にCSAJのウェブサイトで発表され、参加者を募集してきた。その結果、書類による事前の一次審査を通過した3つのグループが、コンテスト会場に集合した。3つのチーム名は、アンピドローンに株式会社理経、そして慶應義塾大学武田研究室テクノプロデザイン社。3チームは、優勝賞金10万円と、約200万円相当のVRプログラミング開発キット一式の副賞をかけて、2段階の審査に臨んだ。
技術や独創性をアピールするプレゼン審査と2つの実技審査
プログラミングコンテストの本選に参加した3チームは、2つの審査を経て優勝が決められた。
最初の審査は、ドローンのソフトウェア技術や課題をクリアするための独創性などをアピールするプレゼンテーション。今回のプログラミングコンテストでは、自動航行を基本とした空撮と物流という2つの実技審査が行われる。空撮競技では、会場に設置された3つの四角柱に描かれているマーク(◎△◇)を自動航行で撮影しなければならない。会場の広さと四角柱の位置や高さは、あらかじめ競技者には伝えられている。そのデータを元に、利用するドローンの自律飛行プログラムにGPSの位置情報や飛行高度などをインプットして、全自動で飛行と撮影を行わなければならない。もうひとつの物流競技では、鉄製のパイプで組まれた障害物に当たらないようにして、対象地点に着陸して100グラムのスチレンボードを切り離し、スタート地点に戻ってくる。
2つの競技課題をクリアするために、参加した3チームはどのようなソフトウェア技術と独創的なアイディアを発想したかをプレゼンテーションで伝えた。
開発中の機体のトラブルで市販品のドローンに切り替えたアンピドローン
プレゼン審査に臨んだアンピドローンの河野浩之氏は、プログラミングによる自動航行を実現するために、オープンソースのフライトコントローラーを利用して、小型コンピュータのRaspberry piに距離センサーを組み合わせたオリジナルの機体を開発していた。しかし、開催日の直前で機体を大破してしまったことから、当初の計画を断念してDJI Phantom 4 Advanceの利用に切り替えて臨んだ。自動航行のソフトウェアも、オープンソースからDJIの提供するGrand Station Proに変更した。そして、同機体に自作した荷物落下アームを取り付けて物流の競技にも臨む。当初の計画では、距離センサーが地上から1メートル未満を認識したタイミングで、サーボモータを制御して荷物を落下させる予定だった。
物流の課題クリアに間に合わなかった理経チーム
株式会社理経チームの羽鳥竣亮氏は、DJI Phantom 3で競技に参加した。自動航行には、DJIのGrand Station Proを利用し、TAP&GOウェイポイントフライトを利用し、四角柱の上部で周回しながら、画像認識技術を組み合わせて、撮影対象のマークを判断する。技術的な工夫は、撮影した画像を白黒の二値化して、画像処理で被写体の形を認識させる点にある。一方、物流競技については、投下物を吊り下げるL字型の金具を工作し、目的の場所で金具を回転させて投下する機構を目指していた。しかし、競技日までに投下機構の開発が間に合わず、飛行のみの実技を行うことになった。