MITがミニドローン用の制御チップ「Navion」をアップグレード

MITがミニドローン用の制御チップ「Navion」をアップグレード

2018年6月20日 – 米国マサチューセッツ州。マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者は、2017年に設計したミニドローン用の制御チップをアップグレードし、さらに小さく省電力になったと発表した。


米粒よりも小さく消費電力24ミリワットの「Navion」チップ

米粒よりも小さな「Navion」は消費電力が24ミリワット、1秒間に171フレームで画像を処理できる

 MITの電気工学およびコンピュータサイエンス(EECS)のヴィヴィアン・スゼ(Vivienne Sze)准教授と、航空宇宙学のセルタック・カラマン(Sertac Karaman)准教授らによる研究チームは、「Navion」というコンピュータチップを発表した。「Navion」は、消費電力とサイズを削減しながら処理速度を向上させることに重点を置いて開発されたチップで、サイズは約20平方ミリメートルと小さく、消費電力は24ミリワットと低い。小さく省電力の「Navion」には、ドローンを飛ばすために必要なIMU(慣性計測装置)と、最大171フレーム/秒でリアルタイムにカメラからの画像を処理できる性能がある。「Navion」を開発した研究者によれば、GPSが利用できない場所でドローンのナビゲーションを補助するための機能が備わっているので、小さなミニドローンやナノドローンへの搭載も可能になるという。
 研究を推進してきたカラマン氏は「このチップは、省エネルギーなロボットに適しています。例えば、指先ほどの小さな羽ばたきロボットや、空気よりも軽い気象バルーンなどに取り付けて、数カ月の運用を可能にします」と話す。さらに「医療デバイスとして、錠剤のように飲み込んで体内を診察するようなロボットでも、発熱が少ないので有効に機能します」とカラマン氏は補足する。

手のひらサイズのインテリジェントなミニドローンの実現が近づく

手のひらから飛び立つインテリジェントなミニドローンの登場も夢ではない

 MITの複数の研究グループは、手のひらサイズのミニドローンを設計してきた。科学者たちは、ミニドローンが撮影や測量などに飛び回る未来を想像している。しかし、そのためにはミニドローンをナビゲーションする頭脳が必要になる。カラマン氏は「これまでのロボット開発では、市販のコンピュータを使用して『状態推定』アルゴリズムを実装してきました。なぜなら、大型のロボットでは、消費電力について心配する必要がないからです。しかし、小型化が必要なロボットやドローンでは、低消費電力のために、異なるアプローチが求められていました」と話す。
 そこで、カラマン氏とスゼ氏は、アルゴリズムとハードウェアを1つのチップに組み合わせる研究に取り組んできた。初期の設計では、市販のハードウェア・プラットフォームであるFPGAにアルゴリズムを実装した。初期のチップは、通常で10〜30ワットを必要とする標準的なドローンと比較して、2ワットの省電力を実現した。それでも、このチップの消費電力は、ミニドローンの総電力量よりも大きかった。そこで研究者らは、チップをさらに小さくするために、サイズと消費電力の両方で、新たなチップを設計した。その結果「チップ設計の柔軟性が大幅に向上しました」とスゼ氏は話す。
 チップの消費電力を低減するために、研究グループはチップに保存されるデータ量を常に最小限に抑える設計を思いつく。その結果、データがチップ全体に流れる方法を最適化した。スゼ氏は「チップに一時的に保存していた画像は、実際には圧縮されているため、少ないメモリで処理できました」と語る。また、ゼロを計算する、といった無関係な操作を削減し、データ内のゼロを含む計算ステップをスキップする方法も発見した。「すべてのゼロを処理して保存する必要がなくなり、不要なストレージや計算サイクルが大幅に削減され、チップサイズと消費電力が削減され、チップの処理速度が向上しました」とスゼ氏は補足する。
 「Navion」は、約0.8メガバイトにメモリを減らしている。さらに研究チームは、以前にオフィスや倉庫などで飛行したドローンで生成されたデータセットを使ってテストも実施した。「私たちは低消費電力と高速処理のためにチップをカスタマイズしてきました。そして、十分な柔軟性を持たせ、さまざまな環境に適応して省エネルギーを実現しました。重要な点は、柔軟性と効率のバランスです。チップは、さまざまなカメラや慣性計測ユニット(IMU)センサーをサポートするように再構成できます」とスゼ氏は話す。実験などの結果から、「Navion」は消費電力が24ミリワットとなり、1秒間に171フレームで画像を処理できることが証明された。
 今後、研究チームは、小型のレースカーにチップを実装し、性能を検証していく予定だ。レースカーに取り付けたオンボードカメラのライブ映像を処理して、チップが空間内のどこにあるかをリアルタイムで判定し、必要な電力量も計算する。最終的には、ミニドローンを使ったテストも予定している。

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