点検球体ドローン「ELIOS」 運用事例拡大
ブルーイノベーション株式会社は、今年3月に業務提携したスイスのFlyability社製の点検用球体ドローン「ELIOS」の活用事例を11月29日、発表した。下水道やボイラー室内といったGPSの届かない屋内の狭小で暗所での点検作業が期待され、機体の販売、同社に依頼される運用件数も増加している。
同社CEOの熊田貴之氏によると「屋内でドローンを運用する場合、GPSが使えないことだけでなく、磁場によってコンパスエラーが発生したり、電波の輻輳が起こる。このような問題を克服できるドローンを探していたところ、Flyability社の球体ドローン「ELIOS」に行き着き、業務提携に至った」と経緯について話した。
Flyability社は2014年に7人でスタート、現在は、従業員も75人に増え、ELIOSは世界30カ国に400機が出荷されるまでに成長した。ELIOSは、2011年の東日本大震災の福島第一原発事故が契機となり、球体ドローンを開発することになったという。実際に米国最大手の電力会社エクセロンでは原発などに導入され、1時間あたり8シーベルトの放射線でも耐えることが分かっている。
ELIOSの機体は、直径40センチのカーボンファイバー製の球体フレームに覆われ、飛行時間は約10分。防塵、防滴仕様となっている。点検に欠かせない“眼”としてフルHDカメラとサーマルカメラを搭載。2台のカメラは飛行中ジンバルによって安定た画像を撮影、同時記録が可能となっている。5分間照射可能な28Wの9段階調整可能なLEDライトが組み込まれている。機体重量はバッテリーを装着し700gと軽量。フライトコントローラーはFlyability社オリジナルで、操縦はマニュアルでFPV飛行させる。現在電波増幅器を技適申請中で、これが通れば飛行距離を伸ばすことができる。
ELIOS導入のメリットは、有毒ガスが懸念されるような狭小空間の作業における安全性向上と点検箇所の画像をリアルタイムで取得できることから時間単位での作業が可能となり作業効率が向上すること。そして足場を組む必要もないためコスト削減にもつながることが挙げられる。
以上のように世界でも唯一の点検ドローンの応用範囲は、発電所、下水道、海運、建設、工場、警備など多岐にわたる。
国内でELIOSを使った事例としては、電力会社と製鉄会社のボイラー点検で、これまで総足場を組むなど莫大な費用がかかっていたが、ドローン使うことで全ての点検箇所を見ることができ、定期修繕前の調査としては十分であることが分かったという。
工場の配管や煙突の点検では、これまで一度も内部状況を見ることがなかったが、映像に収めることができた。
建物地下ピット内部は、天井が低く、有毒ガスが充満している可能性もある過酷な環境だが、ドローンを入れることで、水漏れや壁のひび割れを確認できた。
海外でも貨物船の船倉内バラストタンクやスペインのバルセロナの下水道、ポーランドでは製紙工場のケミカルタンク内部の点検で、その効果が認められた。
ドイツの電力会社ユニバー社の火力発電所のガスタービン点検では、従来は煙突部分にクレーン、足場の設置し、計3日間検査に必要だったが、ELIOSを使うことで1時間で完了させ、施設の運用中断期間も大幅に短縮した。
変わった事例では、フランスの国家警察特別介入部隊が人質が取られているようなリスクの高い状況で、トラップの有無や部隊の突入する事前確認が有効に行われ、警察官の安全性を高めたことが紹介さされた。
同社では現在ELIOSの機体の販売や屋内点検分野でのソリューション・サービスを展開している。機体は導入企業側の操縦など講習人数にもよるが約400万円、運用依頼の場合は1日約60万円(1チーム派遣)ぐらいとなっている。
熊田CEOによると、来年には機体15機(実績含め)の納入が予定され、3月までに約40件の運用依頼があるという。今後数年間で機体100機の販売を目標にしている。