【ドローン × AI】エアロセンスが取り組むAIを活用した除染シート点検

【ドローン × AI】エアロセンスが取り組むAIを活用した除染シート点検

エアロセンス(東京都)は、グーグル(東京都)が主催するGoogle Cloud メディアセミナーで、福島県で推進している除染シート点検におけるドローンとAI活用の状況を報告した。


放射能の除染除去物を保護するシートの点検業務にドローンとAIを活用

測量マーカーのエアロボマーカーを手に説明するエアロセンスの取締役COOの嶋田悟氏

 エアロセンスは、福島県南相馬市での除染作業で発生した除去物を覆う保護シートの点検業務に、ドローンとAIにクラウドサービスを活用して、安全で効率的なソリューションを提供している。セミナーに登壇した取締役COOの 嶋田悟氏は、「エアロセンスの特長は、測量マーカーのエアロボマーカーや飛行経路を作成して自律飛行で空撮を行う自社開発のドローンとクラウドサービスを活用したデータ解析の自動化にあります」と説明する。同社のクラウドサービスAeroboCloudは、ドローンで収集したデータをクラウド上で管理して、測量や点検などの産業分野にデータ処理や解析を提供する。開発に携わってきたクラウドプロダクトマネージャの菱沼倫彦氏は、「AeroboCloudは、飛行データの管理と可視化に、ドローン測量やマーカー基準点測量にシート点検などのアプリケーション機能をクラウドサービスとして提供しています」と話す。
 ソリューションの基本的なワークフローは、ドローンで撮影した数百から数千枚の写真をGoogle Cloudで構築されたAeroboCloudにアップロードするだけで、地図タイルや3Dモデルなどが自動で作成される。クラウド上では、フォトグラメトリ(写真測量)計算で3次元モデルデータとオルソ画像を生成し、オルソ画像からWeb地図も生成できる。
 エアロセンスでは、ドローンによる空撮とAIにクラウドを活用した画像処理の技術を応用して、福島県南相馬市の除染シートの点検に協力している。除染シートとは、放射能の除染除去物を保護するシート。福島県では、2011年3月11日の東日本大震災での福島原発で発生した水素爆発により、多くの地域が放射能で汚染された。汚染地域の本格的な除染作業が開始されたのは、被災から1年以上が経過した2012年7月27日。南相馬市では、竹中工務店や竹中土木など複数の建設会社が共同で事業体を構成し、除染作業を行っている。現在は、除染での除去物を格納する仮置き場に、何層にも遮蔽されたカバーシートで覆って保管する仮置き場が築かれている状況。仮置き場は、南相馬市だけで160箇所に及び、その1区画は10,000㎡の広さがある。除去土壌を覆うシートは、高さが約3mあり、紫外線や気候による経年劣化と動物などの害獣被害によるシート破損が発生するため、定期的な目視点検が必要となっている。この点検の業務効率化とリスク低減のために、ドローンが導入された。

AIの開発に携わってきたクラウドプロダクトマネージャの菱沼倫彦氏

1円玉ほどの破損を発見する点検業務にドローンとAIを活用

除染作業の全体像(出典:福島民報)

 エアロセンスによる除染シートのドローン点検は、2015年12月8日に最初のデモンストレーションが行われた。そのときには、1区画の撮影に10~20分程度の時間を要し、100~500枚の画像を撮影した。南相馬市や除染作業を行う共同事業体が、ドローンによる点検を希望した背景には、現地での苦労があった。その点について嶋田氏は、「農地に設置した仮置き場では、カラスなどのいたずらでシートに1円硬貨大の穴があく事象が発生し、定期的な点検と補修が必要でした。また、シートの上部を目視で点検するためには、約2.5mのシート上部に梯子をかけて登るので、端からの転落や内部に空洞があると踏み抜くなど、安全管理上の問題がありました。こうした背景から、シートに登らずに、目視以外で安全かつ効率的に点検を行えるドローン空撮が採用されました」と経緯を振り返る。
 エアロセンスでは、GPS測量機能を内蔵した自社開発のエアロボマーカーとドローンを活用して、測位ログと空撮画像をクラウドにアップロードするだけで、撮影した画像の正確な位置を記録するドローン測量を実現している。このマーカー検知技術に機械学習を活用し、全自動ドローン測量を実現した。そして、2016年5月からドローン点検の運用開始と平行して、除染シートの損傷箇所を自動で検知するための学習データ集めを開始した。学習データとは、将来的にAIが破損箇所を自動で検知するための参考とする画像情報。シート上部を空撮した画像から、目視による検出結果を蓄積し、その中から破損している画像を抽出して、学習用に活用する。菱沼氏は、「一枚の教師データとなる画像を回転させて、複数の学習データとして活用するなどして、機械学習の精度を高めていきました」と説明する。
 2017年8月からは、損傷箇所を自動で検出する処理の開発を開始し、空撮画像から作成されたオルソ画像を識別するために、Googleの機械学習用オープンソースライブラリのTensorFlowを活用した。そして、2017年11月に、シート点検機能の提供を開始した。AIによる識別機能が強化されたシート点検では、損傷箇所の候補がエアロボクラウドからダウンロードできるようになり、オペレーターが一括表示で確認し、目視による画像確認と比較して約60%の作業時間の削減につながった。菱沼氏は、「鳥の糞や水たまりなども破損と検知されてしまいますが、あえて可能性がある破損を多めに検知するようにしています」とAIの処理について補足する。
 エアロセンスでは、ドローンとAIとクラウドによって実現した安全かつ効率の良い除染シート点検のソリューションを南相馬市以外の地域にも提案していくという。

除染シートのドローン点検の様子を解説する嶋田氏

AIによるシート点検の検出例

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