取材活動を大きく制限し、国民の知る権利を侵害
日本新聞協会は2月8日、政府が小型無人機「ドローン」によるテロへの対策として今国会に提出予定の規制法改正案に、自衛隊や在日米軍施設上空の飛行禁止を盛り込む方針に反対する意見書を菅義偉(すが・よしひで)官房長官宛てに提出した。取材活動を大きく制限し、国民の知る権利を侵害するとしている。
政府が昨年末まとめた「小型無人機等に係る緊急安全対策に関する報告書」では、ドローンによるテロを防ぐため、東京五輪などの開催期間中は、会場と周辺上空の飛行を禁止。また、自衛隊や在日米軍などの防衛関連施設の恒久的な飛行禁止を盛り込んでいる。
意見書では、恣意(しい)的な判断などで禁止区域が不適切に拡大し、不当な取り締まりが行われかねず、取材現場に大きな影響を与えるなどと懸念を表明した。
この日、日本新聞協会編集委員会代表幹事で、産経新聞社の井口文彦執行役員編集局長が内閣府を訪れ、緒方禎己(よしみ)内閣審議官に意見書を手渡した。緒方氏は「関係部署と調整して検討する」と返答したという。井口氏は「強い懸念が加盟各社から寄せられ、協会の総意として、立法化反対の態度を表明した」と述べた。
意見書
一、このままでの立法化は、報道機関の自衛隊、米軍などへの取材活動を大きく制限し、国民の知る権利を著しく侵害するもので強く反対する
一、ラグビーW杯、東京五輪・パラリンピック開催に向け、テロ対策の立法化の必要性は十分に理解する
一、身元が明確でテロ行為を行わない報道機関のドローンを一般のドローンと区別せず一律規制すると、取材活動に大きな影響を与える
一、防衛施設については飛行禁止区域が不適切に拡大し、不当な取り締まりが行われることが懸念される。特に米軍への取材活動は大きく制約され、当局の発表に関する真偽の検証もできなくなる恐れが強い
一、行き過ぎたテロ対策によって取材・報道の自由が阻害されることのないよう求める