【SLUSH TOKYO 2019】株式会社シナモン平野未来CEOインタビュー 「めちゃめちゃ得意なことに集中できる環境を」

【SLUSH TOKYO 2019】株式会社シナモン平野未来CEOインタビュー 「めちゃめちゃ得意なことに集中できる環境を」

 画像認識、音声認識、自然言語処理のAIプロダクトを手掛ける株式会社シナモン(東京)の平野未来CEOが、2月に開催されたSLUSH TOKYOのステージに立ち、ビジネスへの向き合い方、ワークスタイルなどについて語り来場者を魅了した。スピーチの直後に会場のプレスルームで話を聞いた。


「私、苦手なことは全然できないんです」

Qまず会社の紹介を。

――シナモンは人工知能の会社です。特にホワイトカラーの生産性向上に力をいれています。ホワイトカラーにとって、面倒な仕事ってたくさんあると思います。それを人工知能に任せて、人間は人間らしい仕事に集中できるようにする。そんな世界を実現することを目指しています。ホワイトカラーの生産性を向上させるプロダクトが4つあります。ドキュメントを読み込むもの(「Flax Scanner」)、音声認識(Rossa Voice)、レコメンデーションエンジン(「Lapis Engine」)、チャットボット(「Scuro Bot」)です。

Qビジネスにしようと考え始めたのはいつごろ?

――考え始めた、ということでいうと3~4年前。研究としては10何年前からやっていました。ビジネスにしようと思ったのは3年前ぐらいです。

Qホワイトカラーの生産性を高めること、と、研究していたAIでビジネスをしたい、ということと、どちらが先ですか?

――AIでビジネスをしたい、と考えたほうが先でした。最初は2006年。当時、AIをビジネスに使うことをやろうとしていたんですけれども、当時はいまほどAIブ-ムではなく、全然売れず、あきらめてほかのビジネスをしていた、という経緯があります。それが3~4年前にAIの波みたいなものが来たので、戻ってきたという流れです。

Qホワイトカラーの生産性の向上に着眼したのは?

――2年前です。それ以前から面倒な仕事はたくさんあって、私はそういう仕事が死ぬほど嫌いなので(笑い)イヤだなって思っていました。自分として生産性が高いように働く、ということはしていたのですが、それをビジネスにしようとか、ほかに人の生産性も高めようとか、そういうことは考えていなかったです。ところが2年前に1人目の子供を出産して、そのタイミングで電通の過労死の事件があったんですね。それがすごく私には大きなインパクトを与えて、それが考え方が変わるきっかけでした。

Qどんなふうに変わりましたか?

――あの事件はちょうど出産の前後ぐらいに話題になって、ほぼ毎日のように報道されていました。亡くなった女性はすごく若いし、大学も私と同じだったし、電通には私の友人がたくさんいるしと、この問題をすごく身近に感じました。すごく近い存在の人が、そんなことになってしまった、と。そのときにふと、自分の子供が同じようなパスを進む、なんてことになってしまうかもしれない、と考えるようになりました。いまの日本人の働き方はいかがなものか、と疑問を抱くようになって。そこから、ホワイトカラーの生産性を日本全体の課題だと認識しはじめて、会社のミッションもホワイトカラーの生産性向上にして、プロダクトもそういったものとして、取り組むようになりました。

Q「ホワイトカラーの生産性向上」という問題意識は、社会の課題として重要視されるでしょうか?

――先進国では重視されると思います。というのは先進国のほうがホワイトカラーの割合が大きいことと、先進国はいずれも生産年齢人口が不足する、という課題を抱えていることがあります。その先頭を走っているのが日本です。日本で問題が大きいけれども、今後は他の先進国でも同様の課題が出てきて、重要になると思っています。

Qご自身のワークスタイルも生産性、効率を重視した生き方のようですね?

――そうですね。とくに上の子供が2歳になったばかりで、かわいいんですけど、死ぬほど大変なんですよ(笑い)。ですので、効率よく働かないと。自分の時間は24時間しかないし、会社も大きくなっていかないですし。

Q生産性を重視するうえで重要なことは?

――自分が仕事に使える時間を確保する。あと、自分がめちゃめちゃ得意なことしかやらない。この2点ですね。

Q「めちゃめちゃ得意なこと」ですか。

――私、得意なことはめちゃめちゃ得意なんですけど、苦手なことは全然できないんです。メール返信するとか、そういうレベルのことができない、みたいな(笑い)。未来のことを考えたり、人前で話したりとかは割と得意だと思いますが、日時調整とかできなくて。人によって得意なこと、苦手なことってあると思うんです。日本人って、苦手なことを少なくとも平均ぐらいには持っていくように努力をする傾向があるな、って思っているんですけれど、それ、私は間違っていると思ってるんです。というのは、めちゃめちゃ苦手なことを、努力しても、それは5点を10点にする、みたいなことです。それ、意味あるんだっけ、って思うんです。それよりも、めちゃめちゃ得意なことに全員が集中してもらう環境、とか体制を作ったほうがいいんじゃないか、って思っていて。

「努力して実績をつくった2018年 2019年はそれをスケールさせたい」

Q苦手克服より、得意集中という考えですね。ところで、自分のめちゃめちゃ得意なことって、誰もがみんな自分のことを分かっているものでしょうか?

――一般的に、めちゃめちゃ得意なことに本人自身が気づいていないことは、いっぱいあると思います。というのは、自分にとってめちゃめちゃ得意なことって、それが当たり前で、息を吸うレベルでできること。よくある間違いは、「自分はこれが得意だ」って思っていることは、なにがしかの努力をして結果が出たから得意なのだ、って思ってしまっていること。結果が出たことでフィードバックがかかってしまって、刷り込みが行われてしまう。しかし実際は、一番得意なことは、ほかの人にとっては、やるのが大変なんだ、っていう事実に気づかないぐらいにやってしまえること。本人も気づいていないので、それを見つけることは結構難しいことかもしれません。

Qビジネスの今後の展望は?

――私たちは事業をスケールさせていきたいと考えています。私たちがいま持っているプロダクトは2年前にリリースをして2017年にPMF(プロダクト・マーケット・フィット)を達成して、2018年に各業界での実績づくりというのをしたんです。実績作りって一番難しいんです。前例がないので、最初に導入するのは慎重になるじゃないですか。その分努力をして実績を作ったうえで、今、われわれのプロダクトが使われています。2019年はそのがんばって作った実績を、ほかの会社にも役立てて頂く段階。横の展開という意味でのスケールをしたいと考えています。海外展開も考えています。2018年の後半にアメリカにも拠点を作りまして。アメリカではまだ日本のフェーズに達していないのでチャンスはあると考えています。


Q AIをビジネスにされていますが、ほかのテクノロジーに興味はありますか?

――IoTに興味があります。たとえば音声認識では、口元からマイクまでの距離が非常に重要なんです。今は20~30センチが最適な距離です。でもたとえば会議室の収音マイクは口元からそれ以上の距離があることが多い。そうなると人間には聞こえないノイズとか反響音とか、めちゃめちゃ拾っちゃうんです。そうすると、AIにできることってどうしても限られてしまう。そこで、IoTデバイスみたいな、専用のマイクみたいなものを作って、それを出席者の席に置けば、ひとりのひとりの声がしっかり拾えると、音声認識でできる幅が広がって、精度も高くなるだろうなと、そんなことを考えます。

Qお話を聞いていて、めちゃめちゃ得意なことは何か、もう一度考えてみたくなりました。ありがとうございました。

平野未来(ひらの・みく): 株式会社シナモン代表取締役CEO。1984年東京・浅草生まれ。お茶の水女子大学でコンピュータサイエンスを学び、東京大学大学院で修士取得。2006年に創業。会社を売却後、2012年にシナモンを創業。2016年、米国人経営者と結婚、2017年、2018年に出産。SLUSH TOKYO 2019開催の2月は長男が2歳になったばかり。

株式会社シナモン: http://cinnamon.is/

スピーチ終了直後にインタビューに応じた株式会社シナモンの平野未来CEO

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