ドローン測量で建設工事の課題解決に挑む鹿島建設

ドローン測量で建設工事の課題解決に挑む鹿島建設

大手総合建設会社の鹿島建設株式会社(本社:東京、社長:押味至一)は、2015年9月にドローンによる写真測量を、2016年6月にはドローンによるレーザ測量を実用化し、大規模造成工事やダム建設工事において、高精度な測量結果を出した。その取り組みと今後の展望について聞いた。(田中亘)


国土交通省の予測する労働力不足時代への対応が急務

 国土交通省が平成28年4月に発表した「 i-Construction. ~建設現場の生産性革命~」という資料によれば、2014年時点で約340万人いる建設現場の技能労働者が、今後10年間で約230万人に減少すると予測されている。その背景には、少子高齢化という日本の抱える人口構造の問題がある。鹿島建設でも早くからこの問題に注目し、将来的な労働力の不足に向けた対策に取り組んできた。その一環として2014年からドローンを活用した測量に注目してきた。
 同社の土木管理本部 土木工務部 環境緑化造成グループ長の加藤康生担当部長は「ドローンが世の中に普及していない2014年から、測量に利用できないか検討をはじめていました。大規模造成工事では、人が地面を歩いて測量をしていくと、多くの手間と時間がかかってしまいます。また、測量の安全に配慮して、大型重機を停止するので、作業時間もロスしていました。こうした課題をドローンによる測量ならば解決できると考えて、山形県のリカノス社と共同で取り組んできました」とドローン測量導入の背景を話した。
 2015年9月に発表されたリリース資料によれば、ドローンを用いた写真測量では、地上に基準点を設置する方法で、誤差±6cm以下の精度を実現した。このときに利用したドローンは、DJI JapanのS900。
「当初は、DJIのPHANTOMから検討をはじめました。そこから、カメラの精度や撮影した画像を解析するためのソフトウェアの選定などを経て、最終的にS900に高性能なデジタルカメラを搭載し、操縦者がリモコンで操作して空撮する方法になりました」
 ドローンによる写真測量に成功した鹿島建設では、現在は複数の大規模造成工事の現場で実運用を行っている。同社の試算によれば、2haの測定面積では、ドローンが1時間で1名で測量できるのに対して、地上から3Dレーザー測量を行うと、2名が1日がかりになり、光波測量では10名で3日を要する。その結果、ドローン測量を1とした場合、地上3Dレーザー測量は約4倍、光波測量は約5.6倍のコストになるという。
 「現場によっては、その地域の測量会社と協力して、必要なときにドローン測量を行ってもらいます。また、測量だけではなく工事の進捗状況の記録などの目的で、現場で購入したドローンを定期的に飛ばすこともあります。これまで、目視では困難だった山の裏側や高所なども確認できるようになり、より的確に現場の状況を把握して、安全な工事に役立てています」

土木管理本部土木工務部の加藤康生環境緑化造成グループ長(担当部長)

ドローンによるレーザ測量を日本で初めて実用化

 写真測量に続いて、2016年6月に鹿島建設では株式会社ニコン・トリンブル(本社:東京、社長:丹澤孝)とルーチェサーチ株式会社(本社:広島、社長:渡辺豊)と共同で、大分川ダム工事でドローンによるレーザ測量を実用化した。鹿島建設の土木管理本部 土木工務部 ダムグループの岡山誠次長は、その取り組みについて次のように話す。
 「レーザスキャナはデジタルカメラよりも重いので、ルーチェサーチの開発した機体を採用しました。4本のアームに上下2つのプロペラを取り付け、合計で8枚プロペラのドローンに、ニコン・トリンブルのレーザスキャナを搭載して測量しました」
 ドローンを使ったレーザ照射による測量では、樹木の隙間から地表面をスキャンできるので、伐採や徐根前でも地形を計測できる利点がある。その反面、写真測量に比べるとレーザスキャナなどの装置が高額になる課題もある。
 「今回のレーザ測量では、ドローンの機体も特注品になるので、写真測量と比較すると10倍以上のコスト比になります。しかし、20haの広さを約13分で計測し、±4.5cm以下の精度で測量できるので、写真測量と効果的に使い分けることで、充分に成果を発揮できると考えています」
 樹木などの障害物に影響されない利点の他にも、測量幅が広く、電線などの空中に存在する対象物も計測でき、写真測量では困難な薄暮時でも利用できるなど、レーザ測量には多くの優位性がある。
 「写真とレーザー、それぞれの利点を活かして、今後は工期やコスト面での最適化を図っていきます。また、急斜面のような人が立ち入るのが困難な場所の事前測量にも活用できます。さらに、測量だけではなく、コンクリート構造物の劣化調査や、防災関係などにも、ドローンを活用できると考えています」
 鹿島建設では、今後もドローンを活用して建設工事の課題解決に取り組んでいくと同時に、社会インフラの点検や調査などにも活かしていく考えだ。

土木管理本部土木工務部ダムグループの岡山誠次長

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