2017年にサービスの提供を目指すドコモのセルラードローン

2017年にサービスの提供を目指すドコモのセルラードローン

株式会社NTTドコモ(本社:東京都、代表取締役:吉澤和弘、以下ドコモ)は、2016年9月6日にセルラードローンを発表し、10月に横須賀のR&Dセンターで飛行実験を、11月に福岡市と千葉市で実証実験を行ってきた。その取り組みと2017年に向けた展望を取材した。(田中亘)


多様なドローンの機体に対応する柔軟な通信環境を提供

 ドコモのセルラードローンは、これまでの実証実験で株式会社自律制御システム研究所(本社:千葉県、代表取締役CEO:野波 健蔵)が開発している機体と、株式会社エンルート製の機体を使っている。それぞれの機体が採用しているフライトコントローラーは、異なる仕様になっている。両ドローンの違いに対して、ドコモではどのように対応したのか。その具体的な解決策は、テザリングというシンプルな接続方法になる。テザリング機能とは、パソコンやタブレットなどの電子機器をインターネットに接続するために、スマートフォンに搭載されているネットワークの中継システム。
 まず、千葉市で行われた実証実験では、すでに千葉市のゴルフ場で自律飛行に成功している楽天株式会社(本社:東京都、代表取締役:三木谷 浩史、以下 楽天)が、「天空」と名付けた配送用ドローンを飛行させた。この機体は、WiFi(無線)通信を使って操縦者からの命令を受信し、自律飛行中のデータを送信する。その仕組みをそのまま遠距離で利用するために、「天空」にLTE対応のスマートフォンを取り付け、WiFi通信をセルラー通信網に中継するテザリング機能を使った。テザリングによって、WiFiの電波が届かない遠方からでも、インターネットを介してドローンの制御が可能になる。その結果、世田谷のコントロールセンターから、遠隔で「天空」の飛行指示を送信し、飛行中のデータをモニタできた。この単純で柔軟な仕組みならば、どのような機体のドローンであっても、WiFi通信に対応していれば、セルラー網を使った操作と監視が可能になる。

楽天のドローン「天空」はスマートフォンを搭載しテザリングで遠隔通信を行う

独自のブリッジを開発しドコモの閉域網を活用したエンルート

 福岡市で離島への空輸を行ったエンルート製のドローンによる実証実験でも、テザリングによる通信を利用している。しかし、実験機では機体を制御するためのフライトコントローラーとスマートフォンを接続するために、独自のブリッジを開発した。エンルートのドローンは、Pixhawk(ピックスホーク)という制御装置にArduPilot(アルジュパイロット)というオープンソースを組み合わせたフライトコントローラーを搭載している。このフライトコントローラーをドコモの閉域網に接続させるために、エンルートではRaspberry Pi(ラズベリーパイ)というシングルボードコンピュータで機能するブリッジ(中継)用のシステムを開発した。このブリッジを介して、ドローンのフライトコントローラーとスマートフォンの通信モジュールが、相互に信号を交換できるようになり、 遠隔オートパイロットを実現した。

エンルートの通信方法

社会課題の解決の一つの手段になることを願ってメニュー化に取り組む

 ドコモでは、セルラードローンが社会課題を解決する手段の一つになると考えている。離島への物資搬送に、災害現場の中継など、ドローンによる空からの目や空輸は、少子高齢化や自然災害にインフラの老朽化といった課題を抱える日本にとって、甚大な被害の低減や、物流弱者への配慮など、多くの効果が期待できる。
 ドコモでは、2017年には具体的なセルラードローンのサービス提供に向けたメニユーに取り組んでいく考え。そのためには、既存の通信インフラを最大限に活用し、なおかつ通常の利用者に影響を与えないための電波状況の把握や帯域制御など、実験と検証を重ねて解決しなければならない課題も多い。それでも、日本のドローン産業が世界から遅れてしまわないように、積極的に取り組み、課題を乗り越えていくという。

モバイル技術とプラットフォーム技術で社会課題の解決に取り組む
ドコモのドローンプロジェクト

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